『光るだけしかない機械』デザインなど
クリア前に読まれることを想定していません。
出発地点
『神は死んだ(ロン・カリー・ジュニア/藤井光)』という連作短編集の中に『神を食べた犬へのインタビュー』という話があります。記者が神を食べた犬に対して行ったインタビューを文字起こししたような形式で書かれているのですが、記者からの質問はすべて、犬の回答を聞けば推測できるだろうということで「 Q?」とだけ、省略して書かれています。実質的には犬のひとり語りのようになってる。これが『光るだけしかない機械』のシステムの発想のもとになっています。
2025年7月に書かれたメモをそのまま載せると、はじめは
ある出来事に遭遇した、ひとりの人の話を聞く。インタビューのような状況だが、自分は発話できず、相槌か?のどちらかだけを選べる。?は質問とか話題振ったりとか、タイミングによってはてしなく分岐していく。
というゲームを構想していました。相手が文脈に応じて?を様々な意味で解釈するというよりは、単にひたすらどこでも話が分岐して思わぬ方向へと進んでいくことに重きを置いていた気がします。
ペンギンの隙をみて1か月でゲームを作ろうと考えたとき、このメモの内容なら短くまとめられそうだと思いました。それで具体的にどうしていくか考えていったのですが、どうにも相槌か?かを選ぶ仕組みがきれいにまとまらない。よく考えてみたら、相槌(要はテキスト送り)ができるタイミングで会話を分岐させる?もできるとなると、2のたった十乗でも1024ですし、作るの大変でゲームとして成立させるのも難しいです。ですが、こちらが用意したタイミングでしか?が機能しなかったり、分岐するタイミングだけ?ボタンが出現するような形では美しくないし、普通に選択肢で分岐するゲームと同じになっちゃいます。
それからの細かい思考の流れは忘れたのですが、いつでも?できる上にすべての箇所で分岐しなくても違和感がない方法を考えていったとき、色々な質問を?としてまとめたみたいに相槌と?もひとつに統合できる気がして、すべての操作をひとつに統合した上で会話が物語の中で自然に分岐するような仕組みを考えていったらいまの感じになってた気がします。
このシステムは、プレイヤーが主人公とほとんどまったく同じように作中世界を認識し、世界に働きかけることができるという点でけっこう気に入っています。テキスト送りもテキストウィンドウもゲーム内世界には存在しないプレイヤーのためのものですが、それらを作中世界にきれいに落とし込めたと思っています。
システムとしてシンプルすぎるから既に似たゲームありそうと思って調べたけど見つけられなかったです。もしかしたらどこかにはあるのかも。アイデア先行のゲーム作るときってネタ被り怖いし、せっかくのアイデアを台無しにしないものを作れるか不安になります。
グラフィック
パソコン壊れたのもあって、制作の前半はノートパソコンでやってました。それもあって絵を描かずに済むような画面構成になりました。基本の正方形の画面に文字が出るのはコンピューターのコンソール的なイメージです。MotionRecの起動時の画面参照したり。文字起こし中の点が増えていくのはDiscordで相手が入力してるときのあれみたいな感じですが、3つの点のアニメがループするだけだと進んでる感なくて不安になりそうだったので増えていく形に。
光はphotoshopでグラデーション作って、全体の透明度をアニメーションさせたら実装簡単なのにそれっぽくなってよかったです。はじめはいまの倍くらい明るくて明暗も一瞬で切り替わっていたものを、目痛くなるかもと思っていまの感じに調整。実装当初は物足りなかったけど、いま見るとちょうどいい気がする。
シナリオ
光ることしかできない主人公が知らない人と一対一で意思疎通するというところまで決まってから、どういう舞台設定/シナリオ書けるか(書きたいか)考えていきました。はじめはファンタジー寄りな舞台で主人公は鳥籠に囚われた魂、とかも考えていたのですが、コンソール的な画面にすれば自然にテキスト表示できてよさそうだったのでいまの感じの舞台に。遭難について調べてたら八甲田雪中行軍遭難事件のこと知ってちょっと寄せる。
ペンギンを作り始めたときは何も考えていなかったのですが、真剣に向き合うにつれ暴力のゲームを作るのがしんどくなってきていて、その息抜きで今回のゲームを作ったという部分があります。ですが結局、こちらもひとつには暴力についての話になってしまいました。ペンギンを作る中で色々考えたからこそ、このシステムを使って納得の行くシナリオを書けたという感じもします。あと安部公房への理解がちょっと深まった気もする。息抜きになったのかはわからないです。どちらかといえば、ちょっと疲れてしまったかも。公開してから一週間くらい集中できずにぼんやりしてた。作ったものと自分との癒着を解くまでに7日かかる。いまはけっこういい状態になってる。
テキスト
全部で11979文字だった。1時間くらいで終わる一回性を重視したゲームにしたいな~って思ってて、実際に遊んで時間計りながらテキスト量調整したりしてた。
音声の文字起こしという設定なので!や?は使わないようにしています。質問が質問とわかるように口調調整したり。わたし自身、自分のリズムで読みたいのでテキスト送りが自動のゲームは好まないのですが、システム的にそうせざるを得ないので、せめてリズムや間にいちいち意味を持たせて退屈にならないようにしたつもりです。
音
効果音はフレーバー的には電子音寄りのほうがいい気もしたけど、試してあまりしっくりこなかった。何度も聞くしアナログで耳ざわりいい方向で。ファミレスやいるかはserumにデフォルトで入ってる音を加工して作ってたんですけど、ペンギン作り始めてからはspliceから持ってきた素材をベースに作ることが増えました。spliceの使い方あってる?気に入ってる音は、光るの長押ししたときにブーンって鳴るやつです。なんか、あるよね。冷蔵庫とかで。
BGMはけっこう悩みました。ゲームの内容的にBGMで感情を誘導するようなことはしたくなかったので、感情的じゃない、空間についての曲が作りたかった。『さよ』のBGMは3秒くらいのフレーズをずっと繰り返してるけど違和感がない、むしろすごくいいです。永遠。展開がない繰り返しでもBGMとして成立するんだって思って、わたしもそのようにしました。音選びってすごく悩んで苦しいから、全曲同じ音源にしてピアノ的に作曲しました。
不具合など
最初のバージョンで進行不能になる不具合残ってたの惜しいことしたな~って思います。一回性のゲームとして作ったので。一回性で言うと分岐作らず途中から再開とかも作りたくなかったけど、あの状況で断っても無理やり持ってかれたら印象悪いかなって思って分岐にしちゃった。
所感
ひとりでゲーム作るの久しぶりだったんですけど、やっぱり身軽で取り回しがよくて楽だな~というのを強く感じました。自分でプログラム書くのも健康にいいなって思います。短編って作りやすいです。初期のエネルギーで50%くらいいける。あとやっぱりGodotが好きです。Godotおすすめです。うまいこと制作のあり方を使い分けていきたいですね。ペンギン作ります。