いるかのデザインなど

いるかにうろこがないわけを、どういうことを考えながら作っていたか書きます。もうちょっと後に書くつもりだったけど、なんかぼんやりしてペンギンの作業も手につかないので書いています。これ書いて進撃の巨人観て寝ます。

出発点

まず、Unityと仲良くなるためにひとつゲームを作ろうと思いました。ペンギンもUnityなのですが、プログラムを任せているのもあってなかなか慣れずに苦手意識がありました。初めてのゲームエンジンでゲームを作るときはアクションゲームがいい、という持論があります。アクションゲームは必要なプログラムや複雑な処理がたぶん少ないです。

アクションゲームを作ることにしたとき、SpelunkyとかNuclear ThroneとかDownwellとかのシビアで上達するのがおもしろいゲームを自分なりのやりかたで作成したい、ということになりました。

ちょっと話は変わるのですが、わたしはゲームをおおまかに『デザインされた困難』と『可能性がまだ多く残っている物語表現の形式』のふたつとして捉えている気がします。現実の困難と違って、ゲーム上の困難はいくら難しくても、克服されることを前提に設計されています。それが好きです。うめき声をあげながら、手汗をびしょびしょにして難しいステージやボス戦をクリアしたいです。いるかも手汗をびしょびしょにするゲームにしようと思いました。逆に今回、後者のことはあまり考えていません。

ゲームの方向性とは別の条件として、長くても一か月くらいで、時間をかけないで作るということも自分に課しました。そしてそのためにも、作るのが大変なセーブ機能がないパーマデスのゲームにすることにしました。

弾を外してはいけない

BABARAGEOでかつて公開されていたゲームに、インベーダーゲームをアレンジしたものがありました。エイリアンが一体だけやってくるので、プレイヤーはそれを狙い撃つのですが、弾は一発しか撃てません。外したら即座にゲームオーバーです。シューティングはどんどん弾を撃つものだと思っていたので、一発がここまで重いシューティングの存在は新鮮でした。いるかの弾の仕組みはこれをもとにしています。弾を外すことと被弾することを等価にしました。攻撃の度に大きなリスクがつきまといます。この仕組みがプレイヤーに、ほかのシューティングゲームとは別の立ち回りを要請しています。

敵の数を抑える

いるかには4つのエリアがあり、各エリアに4種類の敵と1種類のボスがいます。敵の数は少なめですが、これは手間を減らしたかったのと、掛け算のステージ設計がしたかったからです。現在作成中のペンギンの戦闘でも似た考え方をしているのですが、敵と戦うステージを作るとき、ひとつのステージに複数の敵が配置されている、というのではなく、複数の敵の組み合わせによってひとつのステージが構成されている、という考え方をするようにしています。書いていてすごい感覚的だな~と思うのですが、いい表現が浮かびません。少ないパーツの組み合わせで、多様な状況を作り出せるようにしたい、みたいな感じです。

敵の抽選と位置がランダムだと、場合によっては攻略不可能な状況が生まれるかもしれません。その対策として
・敵よりプレイヤーがわずかに先に行動できるようにする
・敵の役割を明確にしひとつのエリアで役割が被らないようにする
のふたつをしています。

ひとつめは言葉の通りで、めちゃくちゃ包囲されても先制攻撃でなんとかなるようにしています。

もうひとつの敵の役割は4つ設定しています。
・プレイヤーめがけて移動する
・プレイヤー関係なく移動する
・移動せず、プレイヤーめがけて遠距離攻撃する
・移動せず、プレイヤー関係なく遠距離攻撃する

各ステージにそれぞれの役割の敵が1種類ずついます。例えば、ひとつのステージに6種類6体の敵がいて、6通りの弾速・連射速度・精度でプレイヤーを狙って射撃してきたらなんか無理そうなのですが、そういうのがないようにしています。射撃タイミングをずらすなどのいやらしいこともしないようにしました。回転しながらたくさん射撃する敵はステージ開始時の角度をほぼ固定にしたりしています。

ボス戦はおおむね状況が固定されるため、ランダム生成された状況に対応していくゲームとは根本で相性が悪いようにも感じますが、あったほうが区切りがいいだろうということで採用しています。ゲームのテンポを保つために、どのボスもスキル抽選と慣れ次第で数秒で倒せるようになっています。3番目のボスはラッシュやボムなどのスキルで一瞬です。最後のボスはしっかり強そうですが、シールドを貫通する攻撃があれば心臓をすぐに破壊できます。ずるみたいなのできると嬉しいですよね(でもこれを制作者側から言われると嫌かもしれない!)。

ところで、Spelunkyの4つめのエリアのあとのボス戦の緊張感ってすごいです。ここまでがんばってやってきたのに、ちょっとのミスで一瞬ですべてを失います。高度なことは要求されていないのにまともにプレイできません。それをやりたかったので、途中からのリトライとかは廃止しました。

ショット/スキル/イノーチ

ショットは当初は一種類で行こうと思っていましたが、味気なさすぎるので増やしました。弾を外してはいけないうえにドロップを回収しなきゃ次の弾が撃てず基本は敵に近づいて撃つことになるので、どのショットでも立ち回りはあまり変わらないです。ひとつのショットで複数を倒せるバースト、シールドを貫通するニードル/ペネトレ、ドロップを距離に関わらず回収できるリターナが特別強いと思っています。特別強い武器があっても問題はないと思っています。強い武器は油断を生み、油断すると一瞬のミスで終わるので、結果的に強すぎない武器で慎重にプレイする方が上手くいく、というのはこの手のゲームではよくあることだと思います。

スキルは難易度の低下を目的として導入しました。弾を外したときの保険になるものとか、身の安全を守るものが多いです。第二の攻撃手段があること自体が弾を外したらだめというコンセプトとはズレるのですが、ただ難易度を高いものを作りたいわけではないからいいかな~と思っています。ヒールは終盤の救済処置です。あるとかなり楽です。

イノーチは3つです。4ステージ攻略する度にショットかスキルかなにも選ばないかを選べて、ショットかスキルを選ぶとおまけでイノーチが1回復します。これはDownwellとほぼ同じですね。ひとつの強い組み合わせにこだわらず、どんどんショットとかを切り替えながら遊んでほしい、というのです。当初はスキップのところがイノーチ1回復でしたが、考え直していまのようになっています。

イノーチが最大の状態で回復すると、イノーチの最大値が1増えます。最大5まで。これは、ひとつめのエリアがうまくいくようになったら、最大イノーチが増えてその後のエリアもやり易くなるという仕組みを作りたかったからです。上達を早い段階で実感できるようにしたかったです。

実装しなかったこと

ショットの攻撃力や敵のHPを導入するか悩みました。HPとかがあったほうがショットやスキル、敵の差別化がしやすいからです。ですが、ワンショットワンキルがゲームデザインとして美しいと判断して結局やめました。

もうひとつ、わりと最後のほうまで導入を検討していたのがプレイヤーの強化要素です。ボス戦毎にプレイヤーの弾速&移動速度、装弾数、最大イノーチ&回復のどれかを強化できるようにしようと思っていました。装弾数を増やせたらゲームのコンセプトレベルで崩れるのですが、強化要素があったほうがカジュアルで遊びやすくなります。けっこう迷って硬派な方向で通すことにしました。いるかは何度も繰り返し遊ぶ中で習熟することを楽しむゲームとして設計したので、疑似的な成長を導入するとよくなさそうです。

ストーリー

物語のないゲームを作るのが気持ち的にしんどいので追加した要素です。いるかの原著をもとに作成しました。読む余裕ないな~と思いながら実装し、わたし以外の人も読む余裕なかったみたいです。例えば、音声で読み上げるとかならいけそうですが、声が入る感じのゲームでもないしあれですね。そこまでゲームシステムとストーリー表現が噛み合っているわけではないと思うので、やがて月刊湿地帯上で全文読めるようにするかもしれません。クリア後に全文読めるようにする、というのはその通りだと思ったのですが、ちょっとずつ読むことを前提とした文章なのでゲーム内ではまとめて表示したくないというのと、セーブを実装したくない(もういるかには時間をかけないつもりです)ので実装しないと思います。

水をイメージ。波のようなステージ遷移音とか。もにゃもにゃしたBGM。敵がやられるときの音とドロップ回収の音がひとつなぎに心地よく聞こえるように。BGMでいちばん気に入っているのはデザート・スランバーです。なんでかというと、曲名がかっこいいからです。

グラフィック

もにゃもにゃ動かしたかった。Baba is Youのグラフィックとか好きです。色はいい感じに出来た絵のカラーパレットから。低解像度でニアレストレイバー法で回転させたときの粗さがすごい好き。モニターの解像度に合わせてもっと綺麗に回転させることもできる(というかUnityでとくになにもしてないとそうなる)けど、汚く回転させるためにいろいろ調べたりプログラマーに聞いたりしました。変なこだわりのために変な手間を掛けているけど、こういうのこそが大事だからって自分に言い聞かせています。

不具合など

フルスクリーンから戻らなくて困りました。直せなくてそのままです。小さい画面のほうが全体が見えやすくて遊びやすいのですが、困りました。

第3エリアのボスを倒すと、まれにボスの画像が消えずに残ります。テストプレイ時に一度遭遇し、感想でも同じ不具合が起きている人が見つかったのですが、再現性がなくてよくわかっていません。なんでですか?

プログラムあんまりわからないしフリーゲームだからこのままにします。ペンギンはプログラマーがいるからこういうことにはならないです。

所感とか

やりたかったことは達成できたように思います。よかったです。ただ、月刊湿地帯というブランド?としてゲームを出すことを考えたとき、遊ぶ人は雰囲気とか物語を求めているのであって、シビアなゲームを遊びたいわけではないんだろうな~というのも感じました。ゲーム制作で食べていくつもりなので、これからはこういうことも考えなきゃいけないわね、という所感です。ペンギンも基本の難易度は下げないと思いますが救済措置はしっかり入れようと思いました。

以上です。いかがでしたか?みなさんもこれを機に豆乳入りの卵焼きを作ってみてはいかがでしょうか?シャッ、シャッ……。