ペンギン 考えていること

ありがたいことにファミレスを享受せよについてインタビューをいくつか受ける機会があり、制作中に考えていたことなどを答えたりしたのですが、完成してからだったら後付けでなんとでも言えるし、そもそも記憶がもうおぼろげになっているな~とも感じていました。やがて過去になる現在にくさびを打つ意味でもちょっと書いてみようと思います。作っているうちに考えが変わっていくとは思う(作ることで考えている節がある)ので、ここで書いたことを完成後も一貫して思っているとかはないです。ネタバレにならない程度の意図バレはあるかもしれないです。メモに近く、とりとめもないけど、まっさらな状態で遊びたい人は見ないほうがいいと思います。

出発地点

『ラブライブ!スーパースター!!』一期の最終話を観た際に、「既に自分はスクールアイドルとして楽しく活動ができていて、ラブライブ!優勝のために争ったりすることに熱心になれない」と話していた澁谷かのんさんが最終的に競争の道を選んだことがずっと引っかかっていて、それから「社会で生きる、人と生きていくことってどういうことなんだろう」みたいなことを考えはじめ、METRO PENGUIN EUTOPIAの原案が出来上がっていった。舞台設定を固めていく中で色々なテーマが混ざってきたので、原案とはちょっと違う方向性にはなっている。

色の構成

ファミレスと同様にコスト削減のために色の数は抑えめ。全体的にちょっと黄色がかっている。どことなくバウハウスっぽく(そうかな?)、やや昔の人が志向した未来のようなイメージ。タイトルのフォントもFuturaを使うか迷い、PENGUINの『GU』のところがあまりにもGUのロゴだったからTrajanになった。

システム

会議などの面倒な手続きや他者との交流と、単純で高揚感のある暴力の世界とを行き来しながらシティと人々の行く末を辿っていく、というのをうまくシステムに落とし込みたい。

アッパーレイヤーの仕組みはかなりシンプルで、シティのどこでだれと何をして過ごすかを選び、リソースを獲得。各登場人物との関係深度(あえて友好度とか好感度、みたいな表現は使わないようにした)が一定値になる度に会話などのイベント(FEの支援会話とかが近い?)が起こる。関係深度に応じて取得できるスキルなどが増えていく。

ロウワーレイヤーでの戦闘は場に出た12体の敵の役割と配置を考慮しながら、リソースと相談しつつペンギンの群れをどんどん崩していく感じ。現在いろいろ調整しながら作成中。当初考えていたよりは難しくないかもしれない。主人公はしっかり強いし、事前準備の効果が大きい。

なぜペンギン?

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のやみくろのようなイメージから出発。リアルではないけどリアリティのある、地下に潜む凶悪な存在としてのペンギンのよさ。シンボル的で、「かわいい」などのイメージはあるけれど愛玩動物ではない、というのもいい(例えば敵を猫や文鳥にすることもできるが、これはなぜかリアリティに欠くように感じる。わたしだけの感覚かもしれないけれど)。ペンギンの多くの種は(多くの動物がそうであるように)人間の活動の影響で種の存続の危機にあり、保護活動なども行われている(キガシラペンギンとか)。明確に人間の手で絶滅したオオウミガラスとも近い存在なのもいい。あとペンギンが好きだから。

性のない地下都市とユートピア

シティの住民は性機能を剥奪されていて性別がない。この設定がどこからやってきたのかはもう忘れてしまった。まあでも「性別とかなくなったらいいのにね~」と思う人はけっこういると思う。最上のものとしてそこにあるのではなく、生まれたときから自己や世界につきまとっているからうまく付き合っていかなきゃならないもの(だいたいのものはそうだ)。わたしは食欲とか性欲とかの生物的な必要(後者は個の存続ではなく種の存続の条件ではあるけれど)から生じるやつにムカついている。これは幼い考えなのかもしれないけど、現にムカついているんだから仕方がない。「別に性別とかなくても、本物の空を知らなくても、合成食糧しか食べてなくても、いいだろ」みたいな気持ちがある。あと札幌駅~大通駅あたりが、まったく地表に出ずにいろいろできるのが好きで、そういうのもある。

人の生殖能力を奪うというのはちょっと反出生主義的に聴こえるかもしれない。でも作中でそれを実施したのが社会である以上(社会は往々にして自己保存を目的として動くので)人間は生まれ続けるし、あんまり反出生主義を扱ったりとかはしないと思う。

フィクションではユートピア即ちディストピアとなりがちだけれど、ペンギンでは、シティはあくまで言葉通りのユートピアを目指している。もちろん殺人ペンギンなどの実際的な問題は多いけれど、多くの人たちがシティをいい場所にしようとがんばっている。風刺や揶揄のためのユートピアではないということです。

ストーリーとキャラクターたち

ペンギンとシティについての様々な立場の人たち。ペンギンはシティの実際的な問題として立ちはだかっているけれど、個々の人たちにとっては必ずしもそれが最大の問題ではない。世界の実際的な問題がすべて解決されたあとには、その人だけの究極的な問題が残る。世界を救うことで自分を救うことができる人はごくわずかで、多くの人は世界を救う前に自分を救う術を見つけなくてはならない。そうはいっても、自分の心や身体に空いた穴や、深く刻まれた傷にきっぱりとけじめをつけることなんてほぼ不可能で、それでも傷と上手く付き合っていかなくてはならない。

そういうことを考えながらストーリーを作っている。それはそれとしてペンギンはしっかりと脅威です。

人と作る

プログラマーと作っていて、ゲームエンジンも変えたのもあっていままでとはやり方がまったく変わった。すごい当然の話だけれど、わたしが企画とかゲームデザインも担当しているので、わたしが決めないとプログラマーは動けない。仕様をドキュメントにまとめても、いまだに「なんか、いけるでしょ」という気持ちで必要な細部を書き忘れて、プログラマーに質問攻めにされたりしている。

そんな感じでまだ慣れていなくて良いやり方を確立していないにもかかわらず、しっかり順調に進捗が出ている。人と作るのおもしろい。でもこれは、二人体制かつ、既に信頼関係が出来あがっている相手だからこそできていることだな~とは感じる。ちゃんと素直に伝えたりするのがめちゃ大事だ。どっかで我慢したり遠慮したり、逆に相手への気遣いがなかったりでも上手くいかなくなりそう。あと、次に作るときには、もっと仕様書を固めてから制作を始めるべきだと強く思った。さすがにひとりで作っているときのように衝動でやっていくわけにはいかない(ひとりだとしても衝動で作るべきではない。ゲームの規模が大きくなるならなおさら)。

こんな感じです。まだペンギンがどんな感じになるか自分でもわからないので、こわ~と思っています。しかもこれにわたしの生活をしっかり賭けている。楽しいからいいか♪ダメだったら友達の家に無理やり上がりこんで暮らします♪